粘土瓦の日本三大産地の一つ石州瓦。江戸時代の初めに石見国で産声をあげた石州瓦は、400年の時をこえて、現在の島根県西部地方〜大田市、江津市、浜田市、益田市〜にまたがる地場産業として産地を形成しています。江戸時代、この地方は東から数えて石見銀山天領、浜田(松平藩)、津和野藩(亀井藩)が置かれ、日本海と中国山地に挟まれた狭い平野と盆地の中に、城下町や山村集落、漁村集落が集積されていきます。
『屋根が赤い』『小さな小屋にも瓦が葺かれている』。初めてこの地方を訪れる人々が、やや驚きの表情で発する言葉です。石見地方は、石州赤瓦で形成された街並みや集落を至るところで見ることができます。
日本海の青に石州赤瓦のコントラストが映える海岸線の漁村集落、山間や田園の緑の中にやさしく浮かぶ石州赤瓦の集落。切り妻や入母屋の商家や町屋街も殆どが赤瓦で演出されている石見地方の景観は、この地方独特の暮らしの情景として今日に残されています。