『石州モノは、凍てに強く、水を通さない。』『とにかく固くて丈夫な瓦』
瓦職人の間で、昔から語り継がれてきた言葉です。
石州瓦は、ひたすらこの性質だけで、日本海沿線の寒くて積雪の多い地域に 葺かれてきました。
『石州瓦はなぜ強いのか』
私たちは、その理由を1300度の焼成温度に求めてきました。石見焼きの職人さんたちの言葉『とにかくいい土を使って、白い光のような炎で焼き締めるから、いい焼き物ができる』は、そのまま石州瓦の評価につながっていたのです。
石州瓦の強さはどこから生れるのか?私たちは現代科学のメスを入れることを 考えました。皆様にわかり易く自信をもってお伝えすることが、現代のメーカー企業の責務だからです。
実験、試験の種類は計20。そしてさらなる品質の向上と新しい効用を目指して今も新しい試験が継続されています。
試験項目 | 試験方法 | 試験場 |
---|---|---|
送風散水試験 | JASS12送風散水試験 | 朗建材試験センター |
透水試験 | 島根県産業技術センター | |
瓦の耐風性検証風洞実験 | 三菱重工 長崎研究所風洞実験設備 | |
耐風圧力性能試験(150サイクル法) | 瓦屋根標準設計・施工ガイドライン標準試験 | 島根県産業技術センター |
耐震試験 | 実物大の振動実験 | 間組 技術研究所 |
棟の耐震試験 | 瓦屋根標準設計・施工ガイドライン標準試験 | 島根県産業技術センター |
凍害試験 | JISA5208−1996粘土瓦5.5凍害試験 | 島根県産業技術センター |
凍結融解試験 | JISA1435−1991建築用外壁材の凍結融解試験 | 島根県産業技術センター |
吸水試験 | JISA5208−1996粘土瓦5.4吸水試験 | 島根県産業技術センター |
塩害試験 | オーストラリア・ニュージーランド規格AS/NZ4456試験 | 島根県産業技術センター |
耐酸性試験 | JISA5209−1994陶磁器質タイル7.13耐薬品試験 | 島根県産業技術センター |
耐摩耗試験 | JISA5209−1994陶磁器質タイル7.8摩耗試験 | 島根県産業技術センター |
複合塩水噴霧試験 | 複合サイクル試験 | 島根県産業技術センター |
耐アルカリ性試験 | JISA5209−1994陶磁器質タイル7.13耐薬品試験 | 島根県産業技術センター |
超耐候促進試験 | メタルウェザー促進試験 | ツツナカテクノ(株) |
焼成温度実証調査 | 島根県産業技術センター | |
曲げ強度試験 | JISA5208−1996粘土瓦5.3曲げ試験 | 島根県産業技術センター |
熱伝導率測定試験 | 室温大気中にて熱線法 | 島根県産業技術センター |
遮音試験 | 空気舌遮断性能試験JISA1416 | 朗建材試験センター |
屋根材別の野地板裏面温度比較試験 | 神戸大学森山研究室 |
先ほども説明しましたが、石州瓦の品質を支えるモノは、耐火度の高い陶土。この粘土を1200度以上の高温で焼成することで、品質のきわめて優れた瓦が造りだされます。
ごらんの表は、石州瓦と他のセラミック製品の焼成温度の違い。粘土瓦の焼成温度帯の中では石州瓦が最も高いことがお判りいただけると思います。
下の表は、石州瓦と他産地瓦の焼成温度と使用粘土の耐火度の違い。
一般的にセラミック製品は、焼成温度が高いほど品質がアップすると言われます。石州瓦、品質の優位性を支える基本がこの焼成温度にあります。
石州瓦 | 他産地A | 他産地B | |
焼成温度 | 1200℃以上 | 1100〜1150℃ | 970〜1100℃ |
耐火度(杯土) | SK17〜19 | SK16〜18 | SK16 |
(石州瓦工業組合調べ)
石州瓦と土器やせっ器、磁器の吸水率と焼成温度を比べてみました。石州瓦はせっ器や磁器に近いところにいますね。強さの秘密なのです。
石州瓦の品質、性能を科学するまえに、皆さんに知っていただきたいことがあります。それは屋根にも性能が求められることになったことです。
この取り決めは、2004年 日本建築学会から発行された「建築工事標準仕様書JASS12屋根工事」の改訂版でまとめられました。阪神大震災や規模の拡大が予想される各種災害を受けて、大幅に改正された建築基準法をクリアするためにまとめられたのです。
これは知っておくとお得です。悪質なリフォーム訪問業者の撃退にも役立ちます。良心的な屋根工事店を見つけることにも繋がります。
屋根の性能は、大きく「基本的性能」と「二次的性能」があります。基本性能は6項目、二次的性能は5項目の性能があります。
表中○印の付いている項目は、建築工事を行う際に、あらかじめ「工事内容」と
「その工事内容が形成する性能 例えば耐風性能」を建築工事仕様書に明記することが必須条件の項目ということです。
逆に○印が付いていない項目は「性能を有していることがすでに明らかで、明記する必要はない」という印です。
検討を要する性能 | ||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
基本的性能 | 二次的性能 | |||||||||||
防水性能 | 耐風圧性能 | 耐震性能 | 耐久性能 | 耐衝撃性能 | 防火性能 | 断熱性能 | 防露性能 | 防音性能 | 発生舌遮断性能 | 対熱伸縮性能 | ||
屋 根 構 法 |
粘土瓦葺 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | - | - | - | |||
プレスセメント瓦葺 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | - | - | - | ||||
住宅屋根用化粧スレート葺 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | - | - | - | |||||
繊維強化セメント板(スレート波板)葺 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |||||
金属板葺 | 〇 | 〇 | 〇 | - | - | - | 〇 | |||||
折板葺 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
銅板葺 | 〇 | 〇 | 〇 | - | - | - | 〇 | 〇 | ||||
アスファルトシングル葺 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | - | - | - | 〇 | 〇 |
[注]
○:屋根構法ごとに、建築工事標準仕様書(JASS12屋根工事)で記述の対象となる性能事項
斜線:下地を用いる屋根構法において、下地の性能に依存する性能事項
無印:おおむね性能の具現が自明であり、建築工事標準仕様書(JASS12屋根工事)として記述を要しない性能事項
2004年、日本建築学会から「建築工事標準仕様書 JASS12屋根工事」の改訂版がまとめられ、そこで 屋根に6つの基本性能と5つの2次的性能が打ち出 されました。これにより、初めて屋根に性能が求めら れるようになりました。