石州瓦の誕生。それは良質な陶土のほかにもう一つ、来待(きまち)という名の釉薬の存在が不可欠でした。来待釉薬は、おなじく島根県の東部出雲地方で採掘される来待石からとれるもので、耐火度が極めて高く、おなじく耐火度の高い都野津陶土とマッチすることで、高品質な石州瓦が生まれることになりました。
来待石は、約1400万年前に形成された凝灰質砂岩で、来待町の埋蔵量は世界有数のもの、江戸時代から出雲石灯篭(国指定の伝統的工芸品)として全国に知られていました。
来待石は、古墳時代の石棺、中世以降は石塔、石仏、棟石、墓石、石臼、建材などに使われ、近世中頃からは釉薬の原料となり、石見焼きや石州瓦を生み出していったのです。
来待石はやわらかく加工しやすい材料で大変貴重な物産。江戸時代松江藩は藩外持ち出しを禁じたほどでした。
現在、来待石の原産地である島根県松江市宍道町の採掘跡地に「モニュメントミュージアム 来待ストーン」が整備され、来待石の歴史文化を紹介する博物館や体験工房、陶芸が体験できる夢工房が建ち並んでいます。